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ジャポニスムふたたび 68話 「出産の瞬間 歓喜と神秘」

出産の瞬間 歓喜と神秘

本日朝刊です。池川明先生の「胎内記憶」について書いてみましいた。新聞なのでかなり遠慮がありますが、極限まで人間という存在の神聖さについて書かせていただきました<(_ _)>

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出産の瞬間を表現する、という大胆な発想は、古今東西そうあるものではない。

しかし、縄文中期(50004000年前)の土器には、「出産文土器」といわれるものがある。土器そのものを母体に見立て、赤ちゃんがお母さんのお腹の中から顔を出す瞬間を表現した意匠である。

縄文土器の制作者は、土器というものを、単に煮炊きの道具としてだけではなく、人々が尊んでいた対象や、希望や歓喜を刻み付け、形として残した。そうした造形の中に「出産の瞬間」があるのだ。多産や成長の無事を願う表現は世界にも多くみられるが、出産の瞬間というものは珍しい。

「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」は、フランスの画家、ポール・ゴーギャンが、タヒチ島で描いた作品のタイトルであるが、その答えは、現在の科学で解明されることはなくとも、誰もの心の奥底に確かに予感されるものではないだろうか。

赤ちゃんがお腹にいた時の記憶を「胎内記憶」というが、産婦人科医の池川明氏は、3500人の子どもに対し「胎内記憶調査」を実施した結果、3人に1人にその記憶があったという。一般的には胎児は五感が未発達で記憶力も乏しいと言われている。それが、言葉を覚え始めたばかりの2、3歳児が、胎内で見聞きしたことや、胎内に入る以前の世界について話すことがあるという。そして4歳以降は、その記憶が徐々に遠のいていくという。

人は誰しも、人生の様々な場面で、生命の神秘や神聖さを垣間見ることがある。人間はどこからきて、何者で、どこへ行くのか、日本列島の先住民らはその答えを知っていたのかもしれない。

だからこそ、その神聖なる瞬間を、忘れることなく讃え続けるために、土器という形に刻み込んだのではないだろうか。

今年は人間という存在に、あらためて神秘や神聖さを見出してみたいと思う。


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by akikomoriya | 2021-01-18 21:34 | ジャポニスムふたたび
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