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色の話

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 10月25日のブログで、日本人は藍色が好き、ということを描きましたが、日本人にとって大切な色がまだあります。好き嫌い、ではなく、日本人に一番尊ばれている色、それは白です。

 古代日本にはおよそ四つの色彩が認識されていました。白、黒、赤、青。中国人にとって中心を意味する黄はおそらくは白に含まれ、青は自然界の色彩全般を指すので、緑やグレーも含みます。黒は不浄や死、赤は肉体や血。そしてその「白黒赤青」の中で最も格の高い色は「白」です。

 厳密に言うと白は「素」であり、白い塗料ではなく、ありのままの色、ということで、木であれば白木、布ならば染料で染めてない晒しが最も尊く、その様子は伊勢神宮に行けば一目瞭然です。朱塗りの鳥居とは元々大陸から伝わった文化で、本来の日本人が聖なる色と見なしたのはやはり「素」「白」です。社も鳥居も橋も白木、布も紙もすべて白です。

 記紀には高天原に入る条件として「明し、直し、清し心」と記され、「清明心」こそが人として最も大切なことであり、国家や天皇に仕えるものの心構えとして「清浄心」が度々問われています。それは「日の光のように明るく、植物のように素直に、水の流れのように清い心」。その最高の心持ちを持つものこそ、高天原の住人に値するわけです。
 

 その象徴が「白」でした。


 そんなわけで、日本人にとって「白」は特別の色です。日本画では基本の「白」として「胡粉」を使いますが、牡蠣やアワビの貝殻の内側を精製したものです。「胡粉」あっての日本画です。淡い柔らかな、日本人好みの湿潤な「白」なのです。これはアクリルや水彩では決して出せない風合いです。


 ただこの「胡粉」の粉を接着剤である膠と練り合わせて絵の具の状態にするには、擦って、練って、叩いて、のばす、という気長な作業が必要で、やはり日本画は気長でないと続きません。

 ところで、以前熱田神宮で巫女をしていた友人に「お守り作ってるときって、何考えてるの?」とアホな質問をしたところ、「手を洗って浄めてから、黙ってお祈りしながら作業するんだよ」と言われ、敬服したことがあります。もしも巫女さんたちが昼ドラのついた部屋で、彼の話なんかしながらお守り作っていたら…さすがにまずいよね~と、改めて思い知ったのでした。
 
 日本人にとって最高の色「白」。海の恩恵から頂いた貝の白。これを扱うときにも、手を洗って祈りながら、擦って練って…の行程に当たりたいと、胡粉の扱いだけは慎重にしています。絵を持つ人にとって、この絵が「お守り」であるように、そして絵を持って以来、よいことが続くよ、と言ってもらえるような「招福」の力を保持できるよう、「白」に祈りを込めて描いています。

 

 
 

 
 
by akikomoriya | 2011-11-02 23:48 | おしゃべり
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