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戦争の傷跡

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学生時代からジャポニスムの研究をしているけれど
私がこのテーマに取り組み始めた頃は
なんとジャポニスムに関する専門書は多分一冊もなかったと思う。

その一方で
ジャポニスムあっての印象派と言っても過言ではないほど
多大な影響を受けているわけだから
印象派やゴッホ、モネなどの文献から
ところどころ
拾い集めながらのおぼつかない模索だった。

もっと言えば義務教育9年間の間に
社会や美術の授業でジャポニスムについての説明はほとんど記憶がない。

西洋世界の価値観を逆転させるほどの
自由で新しい視点を提示したジャポニスムが
なぜ大きく語られないのか。
ゴッホは400枚、モネは200枚の浮世絵をコレクションしそれを研究し
日本との出会いがなかったらゴッホのひまわりも
モネのスイレンもこの世に存在はしなかった。
当時のジャポニスムの影響はおそらく日本人の想像を遙かに超える。
色彩、構図、モチーフ、自然への考え方その他諸々日本美術の影響は
絵画、彫刻、版画、工芸、建築、服飾、音楽、文学・・・と多岐に渡る。

あまりに多くを学んでいるというのに。

それはひとえに政治的な問題に関わっている。

日本の開国と共に始まったジャポニスムであるが
その終演については意外と知られていない。
第一次世界大戦である。
日本が軍国化すると同時に「美の国日本」への憧憬は語られなくなる。

本来だったら
日本文化の様式、形式を伝播させたあと次にすべきことは
その文化を支えた精神世界についてであるはずだった。
西洋諸国とはまったく違った価値観、世界観を持つ稀有なる国日本。
さらなる深みについて
たとえば茶道の極意は茶碗や道具の素晴らしさやひとつひとつの手前のパフォーマンスにあるのではない。

しかし
終にそれについて語る時期は訪れることなく
本国においてはもはや日本文化やその精神についてなど
風前の灯火なのである。

が、ここに一筋の希望がある。
ジャポニスムの終演から100年。
不思議なことについぞ伝播することのなかった「日本文化の精神」というものについて
有り難いことに
外国人の方々から「もっと知りたい」という声が現在多く上がっている。
特に柔道剣道合気道といった武道は
日本国内よりもフランスやイランの方がよっぽど盛んである。
さらに日本で日本の精神文化について研究しているのは多くが外国人だという。

この70年というもの、日本の精神論を語ると
必ずやかつての軍国主義を疑われる構図となっている。
だからむしろ
日本人ではなく外国人によって
二千年の長きにわたって育まれてきた「和の文化」について
客観的に分析してもらい研究してもらう方がいいのかも知れない。

日本人が特定の宗教に固執しなかったのには訳がある。
それは
生活そのもの、文化そのものの中に
善悪の規準と崇高な物への憧憬と
どう生きるべきかの規範があった。

それは
5・7・5の調べの中に
一枚の風景画の中に
そして
一服の茶碗の中に、である。

それが何であったかすっかり忘れ果てた現在の日本の姿こそが
戦争によって二度と再び取り戻すことのできない
あまりに大きな傷跡なのである。




by akikomoriya | 2015-07-14 09:52 | おしゃべり
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