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ジャポニスム ふたたび

11月20日金曜日
静岡新聞夕刊 文化芸術「ジャポニスムふたたび」
『浮世絵、自然・・・「眼の人」モネ』  

興味のある方はぜひ見てね。生涯において一度も日本に渡ることがなかったモネですが、浮世絵や日本の美術品の丹念な研究から、日本の美意識を私生活や制作の中に見事に取り入れています。

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ジャポニスムふたたび

浮世絵、自然・・・「眼の人」モネ   日本画家 森谷明子

モネが日本の美術から学んだことはあまりにも多いが、仮にそれを一言で表すとしたら、自然への眼差しの深さだろう。
西洋では長い間人物画が主流であって、風景とは人物の背景にすぎなかった。それが日本の場合、単なる風景描写どころか、尊敬と愛情の眼差しをもって引き出された景色であることに西洋人らは驚いた。風景画に価値を置くという概念そのものが斬新なこころみであった。
社会的な地位を得た晩年のモネは、パリ郊外のジヴェルニーの村に家族と共に移り住むと、近くの川から水を引き込み池を作り、モネなりの日本庭園をこしらえた。北斎の名所絵を参考に日本風の太鼓橋を掛け、日本から柳やユリ、シャクヤクなどの植生を取り寄せたり、水生植物園から入手した熱帯性の色とりどりの睡蓮を池に浮かべたりして、まるで庭師のように日がな一日その庭の世話をしながら制作を続けたという。200点以上にのぼる膨大な睡蓮の連作はそうした庭仕事の中から生まれた。
柳の向こうに池があり、池に睡蓮が浮かび、ゆらぐ水面には雲も映り・・・と幾つものモチーフがオーバーラップするモネ独特の画面構成は、浮世絵の構図を巧みに取り入れたものである。が、モネが日本から得たものとは単なる表現技法に留まるものではなく、日々の手入れを通じ愛情をもって自らの庭を眺めるその眼差しの深さであった。
ところでジヴェルニーの家には浮世絵美術館さながらに、モネがコレクションした浮世絵が展示されている。「モネは眼にすぎない、しかし何と素晴らしき眼なのか」と讃えたのはセザンヌであったが、200枚以上にわたるそれらの浮世絵を日々眺め暮らし丹念に研究し、日本の絵師達の視点や着眼を、完全に自身のものとして応用させたことにモネの凄さがある。
浮世絵を見る眼、自然を見る眼、やはりモネは眼の人であった。

by akikomoriya | 2015-11-20 21:19 | 日本文化
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