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ジャポニスムふたたび 15

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ジャポニスムふたたび
静岡新聞 8月1日 朝刊です
   
ゴッホが見た日本人の品格     日本画家 森谷明子
 
作品というものは、それを生み出した個人なり民族なりの鏡である。
ゴッホは極貧の中で400枚もの浮世絵をコレクションしていたことが知られるが、「日本の芸術を研究すると紛れもなく賢者であり哲学者で知者である人物を見出す。」と讃えている。彼が浮世絵の向こうに垣間見た江戸期の日本人とは、はたしてどんな人物であったのだろう。
そのひとつの例として、江戸期の支配者階級を見てみたい。一般的に支配者とは富と権力がセットになっている。しかし江戸期においては必ずしもそうではなかった。実際どこの藩の台所も困窮していたし、武家の次男三男は養子に出されることもあった。が、その武士という身分は何故か尊敬される立場にあった。その理由は、彼らが金銭より価値ある何らかを心得ているからであった。逆に言えば尊敬されるべき立場であろうとする気概が、武士の面目を支えていたのかも知れない。
仁義や礼節、誠。それらは「品格」という言葉にも置き換えられる。天下太平の下で、争い無くして平穏を保つ秘訣を模索した時代でもあった。お金では買えないそれらの作法や精神を学ぶために、富豪の子女は武家に出入りし、それが江戸庶民にも浸透したと言う。
ゴッホの指摘する日本人の面影のひとつは、「品格」を富より価値あるものと見なす、稀有なる国民性ではなかったか。それが、浮世絵なり工芸品なりにおのず滲み出ていたのだろう。
ところで、「日本文化は三度死んだ」と言う言葉を聞いたことがある。一度目は日本という国が西洋風に塗り変わった開国。そして二度目は精神の拠り所を失った敗戦。さらに三度目は、それに代わる拠り所として、「富」が定着した高度経済成長期である。誠や礼節よりも、まずは物質が豊かになること。その果てにバブルがあり今がある。
ゴッホが感銘を受けた「日本」は、必ずしも今ここにある「日本」ではないにしろ、未だ消え残った灯火があることを私は信じたい。

森谷明子日本画遊々
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牧羊舎
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by akikomoriya | 2016-08-01 15:10 | ジャポニスムふたたび
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