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西洋の常識を砕いた大波

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月曜日朝刊でございます。
「ジャポニスムふたたび 26話」
~西洋の常識砕いた大波~

海外への土産物でお決まりの図柄と言えば、葛飾北斎の『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』であろう。Tシャツからメモ用紙まで、この作品がこれほどまでに外国人に愛される理由は何か?...
19世紀までの西洋の絵画表現には、実は幾つもの「ねばならい」があった。例えば、テーマには何らかの宗教的、道徳的示唆が含まれているのが好ましく、光と影による立体表現は必須。人物を主体としたリアルな表現は、まずもって画家に求められる資質であった。
それが19世紀に入ると、目に見える現実を忠実に再現する役割は、モノクロ写真に取って代わる。「はて、絵描きとは何を描くべきか?」
そんな折、海を渡ってもたらされた奇妙な異国の絵があった。極端にデフォルメされた躍動感あふれる大波には道徳的な意味付けはない。さらには影のない鮮やかな色彩の対比に構図や視点の斬新さ。描き手の感動や印象を前面に押し出したその作品は、決してリアルな描写ではないが、ただただ美しく面白い。北斎の『神奈川沖波裏』は、西洋絵画の「ねばならない」の枠を見事に打ち砕いた大波だったのだ。
やがてその大波は、西洋の人々に「抽象」という概念を与え、西洋の芸術表現は華麗なる大変革期を迎えることになった。
北斎の大胆な波形は、ゴッホをはじめ多くの画家たちに影響を与え、模倣され、作曲家ドビュッシーはそこから閃きを受けて交響詩『海』を書いている。出版された楽譜の表紙はもちろん『神奈川沖浪裏』である。
 日本の芸術とは、絢爛豪華な障壁画から詫び寂びまで、あるいは深遠なる水墨の没我の境地から、軽妙洒脱な琳派まで、「ねばならない」の枠を常に超え続けながらも品格を失わない。その絶妙なバランスは、今も昔も西洋の人々にとって、刺激であり謎であり、憧れなのだろうと私は思う。

来迎院英長寺に奉納しました蓮2点のうち 「苦界の救われ」
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by akikomoriya | 2017-07-20 20:17 | ジャポニスムふたたび
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