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ジャポニスムふたたび 27話

♬今朝の静岡新聞です♬

ジャポニスムふたたび

剣に消された「美の国」の筆              日本画家 森谷明子

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クールジャパンの影響で最近よく目にするようになった「ジャポニスム」であるが、私が学生であった25年前は、ジャポニスムに関するまとまった専門書はほとんど見あたらなかった。19世紀末の西洋に於いて、日本は「美の国」と讃えられ、モネやゴッホなどの巨匠に多大な示唆を与え、約半世紀にわたり日本文化が大流行した。しかし、その影響の大きさとは裏腹に、国内でさえもこの誇らしい事実について、積極的に語られなかった理由がある。
まず西洋諸国に於いては、日本の軍国化が顕著になると同時に「美の国ニッポン」への憧憬は色褪せ、さらに太平洋戦争を経て日本を讃える風潮は当然のごとく消滅した。
国内においては、古き良き日本の精神文化を、愛国主義に置き換えて国民を戦争へと先導した事実もあり、戦後日本文化そのものを猜疑的に伺う風潮があった。
実際、現在の義務教育9年間の中で、「ジャポニスム」という用語だけはかろうじて学ぶものの、それを具体的に知る機会はない。たとえば日本の若者が海外に行った時、その国の美術館に収蔵されている浮世絵や屏風について、その特徴や西洋へ与えた影響など、きちんと語れるようでなくてはいけないと思う。
戦争とは勝っても負けても大きな傷を残す。勝てば敗戦国から怨まれ、負ければ勝戦国から軽んじられる。芸術文化とは、それを生み出した民族なり国なりの精神を見える形にした結晶であると考えれば、戦争によって真っ先に否定されるのは芸術文化である。
 ひとたび失った信頼は、決して容易く取り戻すことは出来ないものである。豊かな感性と誠実な手仕事が世界を驚かせた「美の国ニッポン」。先人達のその功績に泥を塗り、信頼を損なわせる失態を、二度と再びくり返してはいけないと強く願っている。


by akikomoriya | 2017-08-14 22:47 | ジャポニスムふたたび
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