人気ブログランキング |

ジャポニスムふたたび 32話

e0240147_23215792.jpg

~ ~静岡新聞 月曜日朝刊です~ ~

ジャポニスムふたたび

武士道「美学」いまも心の指針
                         日本画家 森谷明子

 新作の公開を目前にした映画「スターウォーズ」だが、日本の時代劇から影響を受けたことが知られている。ビジュアル的には戦国の甲冑や柔道着、刀剣、歌舞伎の隈取、花魁などを彷彿とさせ、ストーリー全体にも、日本の武士道を意識した展開が各所に見られる。実際海外では、「禅」や「武士道」といったより精神的な日本文化に興味を持つ人々が増えているという。
現代の日本で、武士道の精神を日常生活で体験することは難しい。とはいえ、かろうじて「武道」という領域で、日本の武士道の心意気を垣間見ることができる。
 そのひとつの例として、剣道、弓道などに見られる「残心」がある。それは勝敗が決まった瞬間の立ち居振る舞い、表情、心持を厳しく制約している。勝利の瞬間、勝どきをあげ歓喜したり、逆に敗北の瞬間、怒りやくやしさを露わにすることは、「残心」の心意気に反する。どんな人でも思わず心が乱れるであろう勝敗の瞬間、自分の感情を客観的にコントロールし、不動心を維持するという精神修養がそこには求められる。
 武士道には、刹那的な勝敗や肉体の存続よりもはるかに価値ある「美学」がある。その美なる風景とは、喜怒哀楽、慢心や驕り、そして恐怖心といった波立つ感情を律した、風もない湖面のような静やかな平常心である。日本の技は「道」と呼ばれる。そのゆえんは、本来宗教を通して体得すべき境地を到達点としているからであろう。
 武士による封建社会を打ち破り、自由と平等を求めて明治という時代がはじまった。しかしながら、否定されたはずの武家社会の「道」は、打ち捨てられるどころか尚一層、日本人の心に指針として存続し続けている。そうした矛盾に気付くこともなく、我々は当然のように時代劇を見て、在りし日の「道」のありようを追憶しているのである。


by akikomoriya | 2017-12-06 23:23 | ジャポニスムふたたび
<< 微笑みの天使 しずおか信用金庫 平成30年 ... >>