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ジャポニスムふたたび 52話

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暑さ寒さも彼岸までとは言いますが
やっと涼風吹いてきましてホッとしております。
しかしながらこの暑さで
昆虫たちもだいぶん打撃を受けたことと思います・・・
あまり暑いと卵が孵化しないのだそうです涙
地球上の生物多様性が守られるように・・・

ジャポニスムふたたび  52話

 小さな生き物 はかない「美」         森谷明子

古今東西、絵を描くということは、手間も費用も掛かるものである。それはいつの世にも贅沢なものであり、当然のことながら、「絵に描いてまで残しておきたい」と思うだけの、価値あるものを描くことになる。

したがって、描かれたもの(作られたもの)を見ていくと、それぞれの民族がそれぞれの時代において、何に対して価値をおいているかがはっきりと見えてくるから面白い。

そうした視点で日本の芸術表現を覗いてみると、実に多様な生物が登場する。鶴や虎となどのめでたい動物はもとより、兎やカエル、猿がくり広げる鳥獣戯画は現在でも人気がある。また、煙草入れや印籠には鳥や魚、亀、ヒトデなどの小動物が、さらに家紋になると、蝶や蛤といったより小さな生き物の意匠が見られる。

それはまさに生物多様性を反映した、大変賑やかな世界である。清少納言の枕草子には「なにもなにも 小さきものは みなうつくし」とあるが、日本人は、より小さいもの可愛らしいものに、命の有難さや美を感じる民族であった。

表現における生物多様性は、ジャポニスムを通して西洋にも伝播した。

北斎漫画には、ありとあらゆる生き物が賑やかに登場するが、それに影響を受けたエミール・ガレは、トンボやバッタ、蝶、カブトムシ、ヒトデやタツノオトシゴなどを装飾的に表現した。それは人物表現を主体としてきた西洋の芸術史上、大変画期的な出来事であった。

たとえ百万遍の言葉を尽くして「トンボは美しく価値のある尊い存在だ」と語ったところで、決して理解されることはなくとも、トンボをモチーフにしたガレの美しいガラス工芸を一目見ることで、「トンボ」という小さく儚い命に美を感じることができるようになり、そこに社会常識や価値基準の変革が起こる。 

その変革こそが、19世紀ジャポニスムの最大の功績であると私は思う。



by akikomoriya | 2019-09-23 23:01 | ジャポニスムふたたび
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