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ジャポニスムふたたび 79話

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みなさまこんにちは!今日は冬至です。

明日からまた清々しい気持ちで一念を始めたいですね!では月曜日朝刊のジャポニスムふたたびです♬


今年4月、ジャーナリストの立花隆が他界した。宇宙飛行士らの宇宙での体験や、意識の変化について取材した『宇宙からの帰還』は、月面に立つこともない一般人の意識すらも、大きく揺さぶる名著であった。

 「宇宙体験をすると、前と同じ人間ではありえない」という宇宙飛行士の証言がここには記されている。静謐(せいひつ)な無重力空間から地球を眺めていると、この地上に戦争があること愚かしく感じるという。彼らの中には、不可思議な神秘体験や、なんらかの意識の変化を体験し、帰還したちに、聖職者や詩人や環境活動家になった者もいる。

 さて、日本には、「国見の歌」というものがある。天皇などその土地を統治するものが、山の上に登って国を眺め、国土を讃え、人々の安寧を祈願する歌である。

 長らく日本を統治してきた天皇とは、いわば神道の最高神官であり、その仕事が「祈り」であると、近年多くの人に知られるようになった。その祈りとは、具体的な文言が公表されることはないものの、日本国と世界の人々の平和と安寧を祈願するものである。

 人類の歴史を振り返れば、争いごとの連続で、日本もその例外ではない。しかし、天皇の祈りとは、そうした人間社会の喧騒と一線を画した位置にある。

縄文が起源とも言われるこの祈りは、あらゆる社会的事情とは別次元の意識を根底に発生したと思われる。国内はおろか、対外国との戦いの最中にも、淡々と継承され今日に至る。

地球を俯瞰した宇宙飛行士のエピソードは確かに衝撃的であったが、その一方で、人目に触れぬ宮中の深部で言挙げされ続ける祈りと、宇宙空間で感じ得る意識とは、どこか似ている。

どちらも世界を俯瞰する静謐な祈りである。

あらためて、来る年がすべての人々にとりまして、平らかなる幸多き一年でありますように。



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by akikomoriya | 2021-12-22 08:46 | ジャポニスムふたたび
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