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ジャポニスムふたたび82話 線に気を込め伝統の美追及

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4月4日静岡新聞朝刊 「気」を線に込め伝統の美追及

西洋は目に見えるものを表現し、日本は目には見えないものを表現する。これは西洋の美と日本の美の、もっとも大きな違いである。

 その「目に見えないもの」をあえて言葉にするとしたら、それは「気」ではないかと思う。これは宇宙に遍満(へんまん)する生命エネルギーと言うべきものである。どのような気が、どのように流れているかによって、作品の良し悪しが決まる。

この「気」を表現するための方法のひとつに「線」がある。つまり、「線」に「気」を込めるのである。水墨画はもちろん、尾形光琳や酒井抱一などの琳派でも、色の美しさや滲みの風合いだけでなく、「線」に「気」が通り、線が生きているからこそ、見る者を惹きつける。

しかしながら、こうした事柄を言葉で伝えることは難しい。目には見えないものを描くための技法なのだから、実際、説明のしようもない。おそらくは、師匠の描いている背中や気配などから、ただ見て学び、その弟子もまた見て学び、を繰り返し受け継がれてきたのだろう。

さらに、こうした日本の表現を、現在の日本の大学で育てていくことは難しい。何故ならば、芸大美大を受験する時に必要とされる技能は、毛筆による線の美しさではなく、西洋的な鉛筆デッサンによる立体表現の技能である。「目に見えるものを正確に捉える」ための西洋的な描法を、「絵画の基礎」として教え込まれた学生たちが、材料だけ和紙や墨や岩絵の具を使ったところで、この国に脈々と受け継がれてきた「目に見えないもの」への崇敬を、受け継ぐことが果たしてできるのだろうか。

薄っぺらな紙一枚の絵空事に、この宇宙に遍満する生命エネルギーの片鱗を、掬い取るようにしてとらえ表現する魔訶不思議。道のりは遠いけれど、そうした昔ながらの日本の表現を追求してみたいと思っている。




by akikomoriya | 2022-04-10 10:30 | ジャポニスムふたたび
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