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ジャポニスムふたたび83話 「まことの花」体得への道

清々しい陽気が続いております。皆さまいかがお過ごしでしょうか?

自分も50歳を過ぎ、しみじみ年齢を感じるようになりました。

人生最後の瞬間まで、花として生きられたらいいな。


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「まことの花」体得へ続く道

    

 

519日は、室町時代の申楽師、観阿弥の命日である。静岡とは縁が深く、静岡市静岡浅間神社への奉納舞を最後に、同地を終焉の地としている。

息子の世阿弥が残した「風姿花伝」は、日本の技芸に関わる人々によって読み継ぎ語り継がれた芸術論であり、同時に「人生」というすべての人の上に繰り広げられる舞台を、如何にして生きるかの指南書でもある。

「風姿花伝」では、舞台での魅力を「花」といい、声や容姿が最も美しい時期を12、3歳の頃とする。それはつまり、どんな芸人も人生の早い時期に美の絶頂を迎え、その後の長い年月は、劣化と喪失に生きることを示している。

その一方で「風姿花伝」には、もうひとつの「花」がある。これを「まことの花」という。「まことの花」とは、10代では決して到達しえない、老いてなお増す魅力である。目に見える魅力ではなく、目には見えない、いわば気配の魅力である。10代の「花」が失せた後も、この「まことの花」を体得するための修行が、人生最後の日まで続いているのだ。

老いとともに増す魅力。静岡浅間神社に奉納された父観阿弥の人生最後の舞台とは、おそらくそうした舞であったのであろう。半月後に死へと旅立つ老芸人の舞は、観衆すべてを感嘆せしめたという。

「老い」とは、往々にして悲哀を持って語られる言葉である。美しさも体力も、喪失の一途をたどる日々、誰の心にも不安や悲哀が襲い来る。しかし、年齢とともにさらなる魅力へ向かっていると思えば、あらたな目標が生まれる。「まことの花」という目標を知ることで、一人の人間の生き方が全く異なってくる。

日本とは、技と芸によって生きるべき道を学ぶことができる国。それは、死ぬ瞬間まで続く、美しくも厳しい技芸の道である。 

 


by akikomoriya | 2022-05-07 18:52 | ジャポニスムふたたび
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